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ブラック・スワン
仕事帰りに観た 「Black swan (ブラック・スワン)」。




物語のすべてが、主人公ニナ(ナタリー・ポートマン)の
心象風景として展開していく。

物語の序盤から不安定なカメラワークが続く。
寄り過ぎたり、ブレたり、激しく動いたり。
座っていたのはそれほど前の席ではなかったのに、
最初は視点が定まらずにくらくらした。
スクリーンをみつめながらも、頭のどこかがぼんやり痺れていくような感覚。
でも、その視点こそがニナの心の在り方なのだろう。

どこにも休まるところがなく、
どこにいても不安定で
自分さえも信じられず、苦しそうな顔で踊り続けている。
そう、まるで彼女が眠る時に開くオルゴールの中の人形みたいに。

物語を全編に渡って貫くのは
ニナの母親の過干渉と束縛、そして激しく燃える嫉妬。
物語でニナが自ら引っ掻いてつけた背中の傷。
あれは、あの母親が彼女の心に刻印した焼きゴテだ。

私の言うことを聞く、かわいい子(スイートハート)のままでいなさい。
お前は私の言うことを聞いていればいいの。
お前のおかげで私は夢を諦めた。
お前には最初から主役は無理だったのよ。

母親がニナに言っているのは
最初から最後まで一貫して同じこと。
手をとり、支えているようでいて
上のような呪文で娘を抑圧し、支配する。

幼いこどもにとって、母親はこの世界のすべてだ。
だから母親はニナに「大人にならない」ための呪詛を用いた。
悲劇の元凶はこの母親の内側に眠っている。
時に甘い囁きになり、時に黒い怒りとなって
ニナをこどものまま籠に閉じ込めてしまった。
大人にさえさせてもらえなかった彼女は
一体どうしたらよかったのだろう。

純粋で穢れをしらない白鳥。
完璧に美しく、気高い存在。

いい大人の歳になっても、それがニナのすべて。

存在そのものが黒鳥をイメージさせる
ワイルドなライバル、リリー(ミラ・クニス)や
バレエ団の監督トマ(ヴァンサン・カッセル)も
本来ならとても存在感のある役だし、
演技も確かにうまかったのだが、
主人公、ニナを演じるナタリー・ポートマンの鬼気迫る演技には完敗だ。
神経質で繊細で臆病なニナっていう女が現実にいて
それがそのまま憑依したみたいな凄味があった。
あのか細い喋り方、正気と狂気の狭間で怯える贅肉のない背中が。

演出上、「え?ホラー映画でしたっけ…?」と思うほどの
トンデモな展開もあったけど、
もうぶっ壊れちゃってるからね。ニナ。
本当にあんな風なんだと思う。振り切れて狂ってしまった人の妄想って。
ある意味リアルっていうか…。うう、哀しいなあ。

時に人が持つ心の風景は、厳しい現実をも圧倒し、打ち砕く。
それほどまでに彼女の世界は昏く、狭く、誰も分け入ることができなかった。

狂気の只中にいても、
最後まで
悪魔に魂を売れるほど世慣れていなかったんだね。
ニナ。
嫉妬、恐怖、焦燥、絶望。
あらゆる感情を自分にぶつけることでしか
「パーフェクト」に辿りつけなかった彼女の姿は
とても痛々しくて、哀しい。

物語自体はハッピーエンドとはいかないけれど
ニナが踊るシーンはうっとりと美しかった。
ブレることなく、まわり続けるピルエット。
しなやかに舞う細い手足。
クライマックス近くの黒鳥の迫力ときたら。
バレエという技術を使って描き出した
最高のカタルシスだ。

いくらバレエの経験があっても、
あそこにいたるまでは
大変な努力がいっただろう。ナタリー・ポートマン、すごい。

この難役を、心と身体で演じきったナタリーに拍手を。


以下、余談。

・リリー役のミラ・クニスが、どうもバレリーナには見えない…
 いくらなんでもワイルドすぎないか?かわいいけどさ!
 ニナとの対比をわかりやすくさせたかったのはわかるけど。

・ウイノナ・ライダーがいろんな意味で怖かった…


・トマって案外紋切り型の男だったなあ。
 そんなんじゃ、宗像コーチにはなれないぞ!
 ヴァンサン・カッセル、顔、怖いし。

以上、観賞報告でした。




posted by robaroba | 映画のはなし | comments(0)
てんやわんやオランダ
ちょっと前の土曜日、
桜坂劇場で
「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」を観てきた。

オランダ・アムステルダムにある
国立美術館の改装工事にまつわる
てんやわんやな日々を綴った
数年に渡るドキュメンタリー。




「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」
  監督:ウケ・ホーヘンダイク
  上映時間:120分


映画は2004年から撮影をスタートしている。

建築デザイナー、館長、学芸員、市民団体、官僚…
どの人を見ても、オランダ人は総じてマイペース。
意見と意見のぶつかりあいで
全然前に進まない。
それぞれの話し合いも、折衝というか議論。
国を代表する美術館の改装だし、
もともとこだわりを持った人たちの集まりだから
なかなかまとまらないのも
しょうがないのかもしれないけど…

お〜い、毎回、打ち合わせの度に
1歩進んで5歩くらい下がってますよー!

と叫びたくなるくらい遅々として進まない。

立場が違う一人ひとりの言い分や
改装にかける思いも面白い。
皮肉めいた口調や断定的な物言い。
熱いんだか、冷めてるんだか!
とスクリーンのこっち側から
突っ込みを入れたくなる。

人間としての生存力っていうか
サバイブしていく能力が高そうだな〜。
オランダの人。たくましい。
あと、美術に対する敬意というか、思い入れが
なんか「根付いてる」って感じだったのが印象的。
みんなの宝物なんだなあ。あの美術館は。

そういえば、様々な学芸員の中で
アジア担当の若い男の子だけが
まさに「アジア」って感じでウケた。
瞳がキラキラで「純情一直線」みたいな。
館長が途中で辞めたときも
他の人が「しょーがないんじゃない」
っていうクールな反応をしている中、
彼だけが
「僕は…あの館長と仲間たちと
改装の完成を喜べると思ってたのに…」
とセンチメンタルな顔。
可愛くてシャイなオランダ人、発見!

ちなみに、2004年から始まった
「改装騒ぎ(この言葉が最適な感)」、
延期につぐ延期で
改装工事は未だに完成しておらず…。
いつリニューアルオープンするのか楽しみです。

興味のある人はサイトで予告編をCheck!
http://ams-museum.com/

posted by robaroba | 映画のはなし | comments(0)
悪人
吉田修一原作の「悪人」を観てきた。



全編を貫く鉛のような重い気配。
雨で霞んだような暗い画が続く。

主人公である祐一(妻夫木聡)と
光代(深津絵里)に共通するのは
誰にも顧みられることのない
日常の中で積み上げられてきた
深い空洞のような孤独。

肉体労働に従事する祐一の
雑に染められた金髪やよれた作業着、
むくんだ顔と淀んだまなざし。

佐賀の国道沿いで働く光代の
地味な服装や化粧っ気のない顔、
淡々と続く代わり映えのしない毎日。

人物描写の細部がやたらリアルだった。
どの街にも、こんな人絶対いるよなあって感じの。

体の中に穴があいていて、
そこに寂しい風が吹き込んでくる。
あの二人の所作や表情を見ていると
例えようのない孤独が
自分の中にも染み込んでくる。
そんな気持ちになった。

行き場を失った二人が
逃亡の果てに海路を照らす灯台を目指すというのが、
いかにも映画的なメタファーだ。

深津絵里が賞を取ったこともあって、
主人公二人の逃亡劇が話題になりがちだけど
実際は二人の周辺にいる人々の
心の風景の方が強烈だった。

被害者の父(柄本明)や祐一の祖母(樹木希林)、
被害者が思いを寄せていた大学生(岡田将生)、
祐一に殺められる被害者(満島ひかり)。
祐一の母や被害者の母。

それぞれにそれぞれの人生があり、人生は続いていく。
その描写が巧みだった。
その人たちの思いや関わりを丁寧に描き、
多層的に見せることで
根源的な「悪」について、問いを投げかけているように思えた。
誰もが抱えている闇と悪について。
そして同じように持っている
正しさや善について。

この時代に
いかにもありそうな設定や題材だけど、
言いたいことはもっと深い場所にある気がした。
被害者の父親の絞り出すような言葉や
祐一にもらったスカーフを巻く祖母の手が
それを代弁していたように思える。

フィクションをリアルへと変換した
出演者の熱演に引き込まれたが、
なかでも被害者役の
満島ひかりが予想以上に良かった。うまい。
この子、沖縄の子なんだよね。元フォルダー5。



「悪人」、いろんな意味で根っこが深かった。
映画を観た夜は悪夢を3回も観た私でした。
posted by robaroba | 映画のはなし | comments(7)
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沖縄で生まれ育った三十路の兼業主婦。好きなモノやコトについての徒然記録です。
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